サステナビリティに対する基本方針としては、特に環境と人的資本の2つが重要だと考えています。海運業界においては、内航船について二酸化炭素(CO2)排出量を2030年度に2013年度対比17%削減、外航船については2030年度に2008年度対比40%削減する目標が掲げられており、当社としてもその実現に向けて企業努力を継続する所存です。また、人的資本に目を向けると、国内人口の減少による働き手不足という大きな問題を抱えています。持続的な成長を実現し続けるためにも、これらの問題に真摯に向き合い、取り組みを進めていきます。
温室効果ガス(GHG)排出量の削減という環境面への取り組みについては、電気推進タンカー等GHGを排出しない船舶の建造、代替燃料への切り替えの検討、新造船の環境対応への検討等、既存事業に対して何ができるのかを引き続き考えているところです。すでに当社では2隻のEVタンカーと1隻のハイブリッドEV貨物船を所有するなど、世界でもいち早く「船舶のEV化」の推進に着手してきました。また、ブルーカーボン・クレジットの創出に向けた取り組みでは、藻場の育成や再生を行い、CO2の吸収促進を進めています。さらに、洋上風力発電施設の現場において技術者や作業員を海上送迎輸送する船舶に当社の海上従業員が従事するなど、当社が持つ安全運航のノウハウや技術を活用することで、クリーンエネルギー周辺事業にも貢献しています。こうした取り組みはまだまだ道半ばですが、技術面の環境整備が進み次第、さらに加速させていきます。
人的資本については、当社は陸上従業員だけでなく、自社の船舶へ配乗する海上従業員も擁しており、「人」は何より重要であると考えます。人種・国籍・信条等で一切の差別を行わないなど従業員の多様化を認めるとともに、テレワークや時差出勤等、多様な働き方ができる環境を整えていきます。また、海運に関わる仕事のやりがいを積極的に発信し続けることで未来の仲間の開拓を進めるとともに、社内においては多種の研修や勉強会の実施、海技大学校との提携による教育プログラムの拡充など、従業員の育成にも注力していきます。
SDGsへの取り組みについては、当社の事業内容に基づき、5つのマテリアリティ(重要課題)を抽出し実行してまいります。社会インフラへの安全を第一とした事業活動においては「安全で確かな輸送サービスの提供」「新たな事業領域への挑戦と技術革新の推進」を目指します。また、将来のいかなる環境変化にも耐えうる強固な経営基盤を確立するために、「多様な人財が活躍する職場環境の推進」「人権を尊重した人財・組織力強化」「脱炭素社会への貢献」を重要課題として引き続き取り組んでまいります。
日本は海に囲まれた国であり、そこで海運事業者が担う仕事は、まさに「経済を支えるべきもの」であると自負しています。「未来の海にこたえを出す会社」として海運をサステナブルな産業へと導くとともに、100年続けられる企業を目指し、今後も持続可能な発展のために努力してまいります。